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【労働問題について】2/3(全3回)

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【労働問題について 】2/3(全3回)

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2017年もすっかり経過して2月も中旬です。まだまだ寒い日が続きますが、春へと一歩一歩近づいている今日この頃です。

さて、今回は労働問題についての第二話でお話したいと思います。

第2回目の今回は、『退職勧奨が違法になる場合』についてです。

 

~退職勧奨とは~
「退職勧奨」という言葉を耳にしたことありますか?

言葉のとおり、会社を辞めて欲しいということを会社から求められることです。しかし、大事なのは、退職勧奨されても「労働者の側にこれに応じる義務はない」ということです。それは、退職勧奨とは、会社から、退職を「お願い」される、あるいは、退職するよう「誘っている」という状況にすぎないからです。

ですから、退職勧奨に応じるかどうかは、労働者の意思に完全に委ねられていて、労働者の側で退職の意思がないのであればきっぱりと断ることは何らおかしなことではありません。まずは、このことをしっかりと理解することが肝要です。

~退職勧奨が違法になる場合~
ただし、会社側の立場に立てば、様々な理由によって、労働者に退職を進めることは現実的にはありうることでしょう。正当な理由でもって、適切な説明を行い、一定程度の給料分の手当てがあるのであれば、退職勧奨が違法とはならないでしょう。

しかし、限度を超えた方法で行われると退職の強要となり、「不法行為」となります。法的に「不法行為」と認定されれば、損害賠償請求の対象となります。

例えば、労働者が退職を拒否しているにも関わらず、何回も呼び出し、数人で取り囲んで退職を勧奨するなど、労働者の自由な意思決定を妨げるような方法で行われた場合は違法な退職勧奨(退職強要)となります。

ここで、現実にあった裁判例をご紹介します(東京地方裁判所平成17年10月21日判決)。

とある会社に勤務していた女性が結婚することを会社に報告したところ、会社の社長らから退職勧奨を受け、その手段・方法が極めて不相当であったことから、退職勧奨行為が違法と認められた事例です。

女性は、まず、会社に結婚することを報告しました。すると、社長は、自分の部下に指示して、再度、女性に仕事を続けるのかを確認させています。女性は退職を拒みました。その後、社長は女性を社長室に呼び出しました。

そして、社長は・・

「せっかくの縁を大切にしなさい」

「人の思いやりが理解できないのか」

「結婚式に出られないかもしれない」などと述べました。

さらに、女性と面談した会社の監査役から報告を受けて、女性を、再度、社長室に呼び、女性は勘違いをしているなどと怒鳴り、「脅迫されているみたいです」と述べる女性を、他の社員のいる執務室に連れ出し、さらに叱責を続けました。

社長は、女性の結婚披露宴においても、そのスピーチにおいて、家庭に入り、家庭を大切にするよう、デザイナーとして家庭をデザインし、家庭を作るということにもっと真剣に取り組むようになどと述べています。

このような事実関係のもとにおいて、裁判所は、

一貫して就労の継続を表明している女性に対し、
①その意思を直接間接に繰り返し確認し、他の社員の面前で叱責までしたこと
②披露宴においても、女性の意に沿うものではないことを十分承知の上で自説を述べたこと
をもって、退職勧奨を違法というほかない、と結論づけています。

この裁判例が認めた慰謝料は20万円です。慰謝料の評価は日本の裁判所は低いですので、金額はあまりパッとしません。

しかし、この裁判例の社長のように、『女性は結婚後家庭に入るべき』という考えからか分かりませんが、このようなやりすぎの退職勧奨は損害賠償請求の対象になりますので、会社の社長様・労働者の皆様、ぜひ心にとどめておいてください。

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