【労働問題について】3/3(全3回)
すっかり春らしくなり、日差しが気になる季節になりました。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
さて、労働問題の第3回目は、
『会社に電話がかかってくるかもしれないから自分のデスクで昼食を摂るように言われる日があるのですが(いわゆる電話番の場合)、労働時間であるとして給料はもらえるのですか?』
結論からいえば、こういった電話番の場合は労働時間に当たります!給料はもらえます!
電話番をしているということは、その従業員が会社から出て自由に行動をすることができず、いつ来るかわからない仕事のために待機している状態です。
この時間は、労働法の分野では「手待ち時間」と呼ばれています。
「手待ち時間」はたとえ作業をしていなかったとしても、「労働者が使用者の指揮監督のもとにある時間」に当たる場合は休憩時間とはいえず、労働時間としてカウントされます。
~裁判所の考え方~
すでに結論は述べましたが、
裁判例では、「手待ち時間」が争われることは非常に多いことです。
裁判所では、
「労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間を意味するとされています(指揮命令下説)。これは、今日の裁判例で採用されている一般的な考え方です(たとえば、三菱重工業長崎造船所事件)。
・現場作業員が始業時刻前などに作業服を着脱する時間
・タクシー運転手が客待ちをしている時間
・トラック運転手が出勤時刻からトラックの出発までの間にトラックに貨物が積み込まれるのを待機している時間
などの時間が過去の裁判において労働時間かどうか争われています。
使用者の指揮命令下におかれたものと評価することができれば労働時間となります。ですから裁判では「使用者からの指示があればすぐに作業を始めなければならない状況にあること」を証明してくことになります。
この点に関して、前掲三菱重工業長崎造船所事件の最高裁判決は、
『労働者が、就業を命じられた業務の準備行為などを事業所内で行うことを使用者から義務づけられ、またはこれを余儀なくされたときは、当該行為は特段の事情のないかぎり、使用者の指揮命令下におかれたものと評価することができる』との一般論を示しています。
そして、結論として、『作業服および保護具の着脱などが使用者から義務づけられており、しかもそれが事業所内の所定の更衣室で行うこととされていたことから、これらに要する時間は、労基法上の労働時間にあたる』と判示しています。
個々の手待ち時間が労働時間に該当するかどうかは立証の難しい点もありますが、拘束時間が長い業種の場合は労働者の側も心身共に疲弊しますので、労働に見合った対価をもらわなければ身体が続きません。
労働時間や残業代の支払いについて疑問がある場合はぜひ当事務所までご相談ください。